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【文献紹介】運動とFMD

運動とFMDに関連する文献をご紹介いたします。文献は、随時更新予定です。

目次

Omega-3 fatty acids supplementation improves endothelial function and maximal oxygen uptake in endurance-trained athletes.
「オメガ3脂肪酸の摂取が持久トレーニングを行うアスリートの内皮機能と最大酸素取り込み量を向上させる」


著者:
Zebrowska A, Mizia-Stec K, Mizia M, et al.
出典:
Eur J Sport Sci. 2015;15(4):305-314.

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1080/17461391.2014.949310
キーワード:
オメガ脂肪酸、NO、自転車、運動

3週間のn-3不飽和脂肪酸(n-3 PUFA)摂取が、自転車競技者の血中一酸化窒素(NO)、内皮機能(FMD値)、最大酸素取り込み量(VO2max)に与える影響を検討した。13名の競技者を対象に、1日2回1.3gのn-3 PUFAを摂取する群とプラセボ群で比較した。n-3 PUFA摂取後、NO濃度が有意に増加し(P < 0.001)、プラセボ群と比べても高値を示した(P < 0.01)。また、NO濃度の増加量(⊿NO)はVO2maxの向上と正相関を示し(r = 0.54; P < 0.05)、FMD値やVO2maxもプラセボ群より有意に高かった(P < 0.05, P < 0.001)。これらの結果から、n-3 PUFA摂取はNOの放出を促進し、心血管系の適応を高め、運動能力向上に寄与する可能性が示唆された。

Endothelial function in highly endurance-trained men: effects of acute exercise.
「高い持久トレーニングを行っている男性の内皮機能:即時的な運動効果」


著者:
Rognmo O, Bjørnstad TH, Kahrs C, et al.
出典:
J Strength Cond Res. 2008;22(2):535-542.

https://journals.lww.com/nsca-jscr/fulltext/2008/03000/endothelial_function_in_highly_endurance_trained.29.aspx
キーワード:
トレーニング、アスリート、抗酸化

運動トレーニングが若年健常者の内皮機能に与える影響を検討するため、アスリート(10名)と対照者(7名)を比較し、VO2max、FMD値、血流量、NO生体利用効率、抗酸化状態を評価した。最大心拍数の90%で行うインターバル走後、各指標を1時間、24時間、48時間後に測定した。運動後、両群で動脈径と血流量が増加し、FMD値は同程度だったが、アスリートは1時間後に一時的な低下を示した。NO生体利用効率は運動直後に増加し、対照者は24時間後にベースラインに戻ったが、アスリートは48時間後も高値を維持した。抗酸化状態は運動後に上昇し、24時間持続した。

Physical Activity, Plasma Antioxidant Capacity, and Endothelium-Dependent Vasodilation in Young and Older Men.
「若年者と高齢者における身体活動度、血漿抗酸化能、内皮依存的な血管拡張」


著者:
Ferdinando Franzoni, Lorenzo Ghiadoni, Fabio Galetta, et al.
出典:
AJH. 2005; 18(4):510–516.

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0895706104011446
キーワード:
トレーニング、アスリート、抗酸化、高齢者

加齢に伴う酸化ストレスの蓄積と血管内皮機能障害は心血管リスクを増加させる。この研究では、長期運動が加齢に及ぼす血管機能と抗酸化能への影響を評価した。対象は若年および高齢のアスリート群と非運動者群で、FMD(血管内皮機能)、酸化ストレス指標(MDA)、総抗酸化能(TOSC)を測定した。 非運動者の高齢群ではFMDが低値で酸化ストレスが高く、FMDは年齢と負の相関を示し、VO2maxおよびTOSCとは正の相関を認めた。アスリート高齢群では非運動者に比べ酸化ストレスの上昇が抑制され、血管機能が維持されていた。

Improved Endothelium Dependent Vasodilation in Endurance Athletes and Its Relation With ACE I/D Polymorphism.
「アスリートにおける内皮依存的血管拡張の改善とACE Ⅰ/D多型の関係」


著者:
Halil Tanriverdi, Harun Evrengul, Seyhan Tanriverdi, et al.
出典:
Circ J : 2005; 69(9): 1105–1110.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/circj/69/9/69_9_1105/_article
キーワード:
トレーニング、アスリート、抗酸化、高齢者、ACE Ⅰ/D多型

有酸素運動は健常者の内皮依存性血管拡張を促進し、一酸化窒素(NO)の産生増加と不活性化抑制による生体利用度向上が機序と考えられる。アンジオテンシンⅡとNOは血管緊張調節に重要であり、ACE遺伝子の欠損(D)アレルは血中・組織ACE濃度上昇と関連する。本研究ではアスリート56名と非運動者46名を対象に、上腕動脈超音波検査とACE遺伝子型(Ⅰ/Dアレル)解析を実施した。ベースラインの動脈径・血流速度に群間差は認められなかったが、FMD値はアスリート群が非運動者群を有意に上回った。さらにアスリート群内ではACE遺伝子型によりFMD値が異なり、Ⅱ型保有者がID型およびDD型より高値を示した。

Effect of a special carbohydrate–protein bar and tomato juice supplementation on oxidative stress markers and vascular endothelial dynamics in ultra-marathon runners.
「ウルトラマラソンランナーの酸化ストレスマーカーと血管内皮変化における炭水化物・プロテインバーとトマトジュース摂取の効果」


著者:
Antonios Samaras , Konstantinos Tsarouhas , Eleftherios Paschalidis, et al.
出典:
Food and Chemical Toxicology. 2014; 69: 231–236.

https://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0278-6915(14)00158-6
キーワード:
ウルトラマラソン、プロテイン、トマト、酸化ストレス

運動は酸化ストレスを介して生体高分子の酸化損傷・免疫機能障害・筋肉損傷・疲労を誘発する。本研究ではウルトラマラソンランナーを対象に、炭水化物とプロテインを1:1含有するホエイプロテインバー(N=16)および市販トマトジュース(N=15)の2カ月間摂取効果を評価した。その結果、両群でチオバルビツール酸反応性物質(TBARS)とカルボニルタンパクが減少し、プロテインバー群ではグルタチオン減少例が増加した。抗酸化活性に変化はなかったが、血管内皮機能指標(FMD)はトマトジュース群で顕著な上昇を示した。サプリメント摂取により酸化状態が改善され、トマトジュースは血管機能向上に追加効果が認められた。

Arterial stiffness results from eccentrically biased downhill running exercise.
「ランニングの血管硬化度への影響」


著者:
Burr IF, Boulter M, Beck K.
出典:
J. Sci Med Sport, 2015;18(2):230-235.

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1440244014000462
キーワード:
ランニング、トレッドミル、脈波伝播速度、ABI

12人の男女(男性8名、女性4名)に40分間、60%VO2maxのペースで傾斜12%のトレッドミルで走らせ、ランニング前後および6, 24, 48, 72時間後に血管硬化度(脈波伝播速度)と筋肉の痛みを測定した。筋肉の痛みと血管硬化度は48時間後に最大となり、その後72時間まで高い状態が続いた。

Long-term ultra-marathon running and arterial compliance.
「長期間ウルトラマラソンをする人の動脈コンプライアンス」


著者:
Burr JF, Drury CT, Phillips AA, et al.
出典:
J. Sci Med Sport. 2014; 17(3): 322-325.

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1440244013001059
キーワード:
ウルトラマラソン、動脈コンプライアンス、トレーニング

ウルトラマラソンを5年以上続けている男性の動脈コンプライアンスを評価した結果、ウルトラマラソンをしているグループは、大動脈コンプライアンスが有意に低かった(p=0.03)。特に、走る距離が長くなるほどコンプライアンスが低く(r=-0.72、p=0.03)、トレーニングの回数、運動強度、継続期間には影響がなかった。

Why isn’t flow-medeiated dilation ehhanced in athletes?
「なぜアスリートのFMD値は上昇しないのか?」


著者:
Green DJ, Rowley N, Spence A, et al.
出典:
Med Sci Sports Exerc. 2013; 45(1): 75-82.

https://journals.lww.com/acsm-msse/fulltext/2013/01000/why_isn_t_flow_mediated_dilation_enhanced_in.12.aspx
キーワード:
アスリート、ニトログリセリン、血管壁

運動による血管内皮機能向上が一般的に見られるが、アスリートの場合は必ずしもそうではない。上肢や下肢をよく使うアスリート(カヌー選手、スカッシュ選手、ランナーなど)の大腿部および上腕部の動脈を測定した結果、アスリートはコントロールよりも大腿動脈のFMD値が低かった、上腕動脈はスカッシュ選手のみ低かった。また、アスリートでは血管直径とFMD値に逆相関が見られ、血管壁/内腔比と大腿動脈のFMDにも逆相関があった。

Higher endogenous nitrite levels are associated with superior exercise capacity in highly trained athletes.
「高度のトレーニングをしているアスリートは、内在性硝酸塩濃度を上げることで運動能力が高まる」


著者:
Totzeck M, Hendgen-Cotta UB, Rammos C, et al.
出典:
Nitric Oxide. 2012; 27(2): 75-81.

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1089860312002388
キーワード:
無機硝酸塩、乳酸、LAT、血漿硝酸塩

無機硝酸塩の摂取がアスリートのパフォーマンス向上に寄与するかを調べた研究では、11名の男性アスリートに2回同じ試験を実施した。血漿中硝酸塩濃度とFMDを測定し、運動中の乳酸濃度や代謝性閾値(LAT)を評価した結果、血漿硝酸塩濃度はLATおよび血管内皮機能と相関が見られたが、運動能力と血漿中硝酸塩濃度の間に直接的な相関は確認されなかった。多重線形回帰分析では、血漿亜硝酸塩濃度が運動能力の予測因子である一方、内皮機能は予測因子ではなかった。

The Effect of Weight Loss and Exercise Training on Flow-Mediated Dilatation in Coronary Heart Disease: A Randomized Trial.
「冠動脈疾患における血流依存性拡張に対する減量と運動トレーニングの効果:ランダム化試験」


著者:
Philip A. Ades MD, Patrick D. Savage MS, Stefan Lischke MD et al.
出典:
CHEST.2011;140(6):1420-1427.

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0012369211606375
キーワード:
冠動脈精神疾患(CHD)、減量、ウォーキング

過体重の冠動脈性心疾患(CHD)患者の80%以上がインスリン抵抗性や高血圧などのリスク因子を抱えており、これらはFMD異常と関連しているため、運動と体重減少がFMDに与える効果を調べた。38名の患者が運動と行動的減量プログラムに参加し、カロリー消費量が異なる2つの運動プロトコールに無作為に割り付けられた。結果、両群ともFMDが増加したが、高カロリー運動群はより多くの体重減少とFMDの増加を示した。FMDの改善は、体重減少と最も強く相関していた。運動と減量により、過体重および肥満のCHD患者のFMDは改善し、体重減少が大きいほどその改善が顕著であった。

Exercise-based cardiac rehabilitation improves endothelial function assessed by flow-mediated dilation but not by pulse amplitude tonometry.
「心臓リハビリテーションでの運動療法は、FMDで評価した内皮機能を改善するが、RH-PATでは改善されない」


著者:
Véronique A Cornelissen, Steven Onkelinx, Kaatje Goetschalckx, et al.
出典:
European Journal of Preventive Cardiology.2014;21(1):39-48.

https://academic.oup.com/eurjpc/article/21/1/39/5925942
キーワード:
冠動脈疾患、RHI、心臓リハビリテーション

冠動脈疾患患者146人を対象に、運動の内皮依存性血管拡張機能への効果をFMDとPAT法で調べた。12週間の心臓リハビリ後、ピーク酸素摂取量は22%増加し、FMDは10.0%から13.1%に改善した。しかし、PAT装置によるRHIは変化しなかった。基礎デジタル脈拍振幅は58%増加し、反応性充血後も増加した。運動はFMDで内皮機能を改善し、RHIには影響を与えなかった。

Isometric handgrip training improves local flow-mediated dilation in medicated hypertensives.
「等尺性ハンドグリップトレーニングは薬物治療中の高血圧患者の局所血流依存性拡張を改善する」


著者:
Cheri L. McGowan, Adrienne Visocchi, Martha Faulkner, et al.
出典:
European Journal of Applied Physiology.2007;99:227-234.

https://link.springer.com/article/10.1007/s00421-006-0337-z
キーワード:
ハンドグリップ、IHG、高血圧

両側等尺性ハンドグリップ(IHG)トレーニングが内皮依存性血管拡張に与える影響を調べるため、16名の高血圧患者がIHGトレーニングを行った。結果、両側IHGトレーニング後、上腕動脈の内皮依存性血管拡張(FMD)は両腕で改善し、片側IHGトレーニング後はトレーニングした腕のみ改善した。これらの結果から、IHGトレーニングが内皮依存性血管拡張を改善することが確認されたが、その改善はトレーニングした四肢に限定され、全身的な血圧低下の原因にはならないことが示唆される。

Training Improves Flow-Mediated Dilation in Patients With the Polymetabolic Syndrome.
「身体トレーニングは多代謝症候群患者の血流依存性拡張を改善する」


著者:
Ales̆a Lavrenc̆ic̆, Barbara Guz̆ic̆ Salobir, Irena KeberPhysical.
出典:
Journal of the American Heart Association. 2000;20(2):551-555.

https://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/01.ATV.20.2.551
キーワード:
多代謝症候群、グリセリルトリニトレート、インスリン抵抗性

多代謝症候群の患者に対する12週間の身体トレーニングで、体力が18%向上し、血流介在性拡張が5.3±2.8%から7.3±2.7%に増加した。肥満度、血圧、インスリン抵抗性、脂質、ビッグエンドセリン-1には変化がなかった。血流介在性拡張は安静時心拍数、ウエスト-ヒップ比、インスリン抵抗性と負の相関を示した。安静時心拍数が血流介在性拡張の主な決定因子となった。身体トレーニングが血管機能を改善した可能性がある。

No acute hyperglycemia induced impairment in brachial artery flow-mediated dilation before or after aerobic exercise training in young recreationally active males.
「レクリエーションに積極的に参加する若い男性において、有酸素運動トレーニングの前後で、急性高血糖による上腕動脈の血流介在性拡張障害は生じなかった」


著者:
Jennifer S Williams, Jacob T Bonafiglia, Trevor J King et al.
出典:
Eur J Appl Physiol. 2023;123(12):2733-2746.

https://link.springer.com/article/10.1007/s00421-023-05209-0
キーワード:
高血糖、有酸素運動

急性高血糖が内皮機能に与える影響と、運動トレーニングの効果を調査した。健常男性24名を対象に、4週間の運動トレーニング(30分、週4回)を実施。運動群は心肺体力が増加し、安静時HRが低下したが、FMDには変化がなかった。急性高血糖が運動後も内皮機能に影響を与えなかったのは、参加者の体力が比較的高かったためと考えられる。

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